こんにちは、”朝5時ブログの女” なつみっくすです。
昨日は、NewsPicksアカデミアのこちらのイベントに参加してきました。
スマートニュースの執行役員を経て、今はマーケティング戦略顧問をされている西口一希さんのご講演とトーク。
西口さんの著書である、『顧客起点マーケティング』のエッセンスをご講演いただきました。
今回のご講演は、写真撮影が禁止だったため、詳しい内容は本でご確認いただきたいのですが、マーケティングに関わる人、経営に関わる人に刺さる内容かと思います。
先日、NewsPicksの佐々木紀彦さんも、この『顧客起点マーケティング』の、「たった一人の分析から事業は成長する」というN1分析の理論について、絶賛されていました。
西口さんは、P&G、ロート製薬、スマートニュースなど、約30年間マーケティングに携わって、100以上のブランドを担当され、数々の成功体験や、失敗体験もあった中で、この本を書かれたとのことです。びっくりしたのは、3冊分のボリュームを書いて、削りに削って、この1冊の本にまとめていったということ。
このイベントで印象的だったことを、書き留めていきたいと思います。
マーケティングに「分断」が起きているという危機感
そもそも、なぜ西口さんがこの本を書かれたのか?
それは、マーケティングに「分断」が起きているという危機感からだそうです。
どんな分断かということで、いくつか挙げられていました。
マーケティングの観点
- マス、オフライン ⇔ デジタル、オンライン
- 販売促進 ⇔ ブランディング
- 短期 ⇔ 長期
組織の観点
- 既存 ⇔ 新規
- 経営 ⇔ マーケティング
「マーケティングは手法論に行き過ぎてしまっている」ことも問題視されていました。数々の分析や測定のマーケティングツールがリリースされていて、カオス状態。近視眼的になってしまっていて、経営からどんどん分断されてしまっている。
なぜ「分断」が起きてしまっているのか?
では、なぜこのような「分断」が起きてしまっているのか? その理由として、こちらの3つを挙げられていました。
- デジタル化の台頭
- マーケットを定義できていない
- 成長ポテンシャルが見えない ➜ 後発ブランドに負ける先駆者
マーケットを定義できていない、というのが、ほとんどの企業で起きてしまっている状態。
それを確認する質問として、こちらの3つの質問が会場に投げかけられました。
- あなたのサービス(製品)には、何人ユーザーがいますか?
- 何人の離反したユーザーがいますか?
- もし100%のシェアを取ったら、何人のユーザーがいますか?
この質問を西口さんがこれまで投げかけてきて、3つすべてに「YES」と答えられる人がほとんどいないとのことでした。この会場では、3つすべてに「YES」と答えた方が、数人いらっしゃいました。
この質問に答えられない、つまりマーケットを定義できていないと、成長ポテンシャルが見えていないということにもつながる。そして、後発ブランドに負けるというリスクが出てきてしまう。
マーケットを定義するとはどういうことか?
たとえば、車メーカーのマーケティング担当であれば
- 免許を持っている人全員
- 車を持っている人全員
- 1ヶ月に1回車を使う人全員
- カーシェアリングや、タクシーを1ヶ月に1回以上使う人全員
このどれにするかによって、母数が違うということ。
どの顧客を、自分たちのマーケットとして定義するか?
これを考え抜くことが大切。これを考え抜いて、定義して数値化できれば、問題の半分は解決するようなもの。
そして、このマーケット定義は変わってもいい。
売上が伸びて、マーケットを再定義していってもいいし、最初から決め打ちではなくても、いくつかのマーケットのパターンを作って、それを試しながら変えていってもいいとのことでした。
マーケットを定義するフレームワークとして、西口さんが使っているのが、
顧客ピラミッド(5セグマップ)。
多くの人が顧客を①ロイヤル顧客、②一般顧客、③離反顧客という上位3層としてしか認識できていないという。 下位2層の④認知・未購買顧客と⑤未認知顧客 まで認識して、それぞれを数値化していくことが大切。
(別のイベントですが、ツイッターに図があったので載せておきます)
まだ『顧客起点マーケティング』 の本を読みきれてないのですが、この本ではこの顧客ピラミッドの活用の仕方が、かなり詳細に載っています。
「ほとんどのブランドは、キャズムの谷を超えていない」という話も興味深かったです。新商品は、新しいもの好きの”イノベーター”や”アーリーアダプター”がいる(足して16%)ので、そこそこ売れる。でも、その人たちは、新しいもの好きで、浮気性のため、あっさり逃げていくことも多い。
この顧客ピラミッドで、マーケットを定義して数値化できれば、キャズムのどこに顧客が何人いるかが可視化できてくるということでした。
ブランディングは可視化できないは嘘
西口さんのお話のなかで、「ブランディングは可視化できないは嘘」というお話がありました。ブランディングも、「9セグマップ」というフレームワークで9つに分解することで可視化できる。
顧客ピラミッドで5つのセグメントに分類した顧客をブランド選好にもとづいて9つのセグメントに分解する手法です。
9セグマップに関しては、こちらのツイートに図があります。
図だけ引用させていただきます。
9セグマップのタテ軸が、次回購買意向。
- 次回購買意向 が高いと(図の上半分)、「積極」の顧客
- 次回購買意向 が低いと (図の下半分)、「消極」の顧客
この「積極」の割合が高いか低いかは、業界によっても傾向が違うというお話でした。たとえば、缶コーヒー業界は9対1だし、モバイルペイメントは2対8とか。(参考値)
相反すると言われがちな、ブランディングと販売促進の活動も、この図で説明できる。
- ブランディングとは、「消極」から「積極」にさせる活動(下から上へ)
- 販売促進とは、購買していない人をさせる活動(左から右へ)
この「5セグマップ」「9セグマップ」で分解して数値化する最大のメリットは、経営者と共通言語で話ができるようになるということ。
「N1分析」とは、たった1人のユーザーを分析すること
この「9セグマップ」でこの9つの顧客層が見えたところで、各層においてどんな施策を行うべきかを検討する。そのために、各層に存在する1人の顧客に焦点を当て、徹底的に分析する。平均値でも架空でもない、具体的な1人を分析するこの手法をN1分析と呼ぶ。
「たった1人の分析で良いの?」という質問をいつも受けるそうですが、
- たった1人を説得できなければ、だれも説得できない。
- これをやらないと打ち手がシャープにならない。(ありきたりの打ち手になってしまう)
架空のカスタマージャーニーでは、行動変容は生まれないとも言っていました。
独自性と便益を兼ね備えた「アイディア」を、N1分析から見出していくことが大切。
経営者、CMOに求められること
さいごに、これだけ撮影が許可されたスライドをご紹介します。
経営者、CMOとマーケティング担当者を比較すると、視野、視座、視点、時間軸のそれぞれで違いがある。
そして、一番大切なのはPL(Profit and Loss)の責任を持てるかどうか?
これは、立場ではなく、そういう責任を自分で持てるか、「自分ゴト化」できるかどうかということ。P&Gのマーケティング出身で、活躍されている方が多いのは、P&G時代に、PLの責任を持つ機会を与えられるから。
PLの疑似体験をするには、身近な人に自分の製品を買ってもらうために何をするか、徹底的に考え抜くこと。
そして、失敗したら会社をクビになっても構わないという覚悟を持って、新たなアイデアを勝負していくこと。
すばらしい講演をありがとうございました!
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