『不格好経営』

こんにちは、”朝5時ブログの女” なつみっくすです。

2013年に発売された南場智子さんの『不格好経営』を読みました。なんで今まで読んでなかったんだろう? と不思議なくらいですが、もう7年も前に発売されていたんですね。

自分の中で勝手につくりあげていた南場さんのイメージが、良い意味で覆されて、失礼を承知で言うと「こんなにおもしろい方だったんだ」と、びっくりしました。

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DeNAの創業までに至るストーリーが赤裸々に書かれていて、何より南場さんが、ご自身がそこでどう思ったかとか、弱みも含めてさらけ出していることがリアルで、あっという間に惹き込まれてしまいました。笑いあり、涙ありの長編ドラマを観ているようでした。

今日はこの本の中で響いた言葉を、ここに書き記していきたいです。

NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で、苦しいときほど「前のめり」になる人、と決められ、全国に発表された。

という南場さんが、意識されていること。

ひとつは、とんでもない苦境ほど、素晴らしい立ち直り方を魅せる格好のステージだと思って張り切ることにしている。そしてもうひとつは、必ず後から振り返って、あれがあってよかったね、と言える大きなプラスアルファの拾い物をしようと考える。

3番目を付け加えるとすれば、命をとられるわけじゃないんだから、ということだろうか。たかがビジネス。おおらかにやってやれ、と。

まさに、この言葉を実践されてきた実績が、この本に書かれているので説得力がある。

まえがきの最後には、この本のタイトルに通じることが書かれていました。

経営とは、こんなにも不格好なものなのか。だけどそのぶん、おもしろい、最高に。

この本のなかで、特におもしろかったのが「激やせラリー」のエピソード。厳しいストレスのなかに全力疾走していて、極端に太ったり、痩せたりする人がいるのは、なんだか想像できる。その前者の人を集めた「激やせラリー」。そんな状況で、そんな過酷なことやっちゃうの?というくらいストイック。このエピソードが、南場さんのストイックさと愛嬌を表している気がしていて、すごく好きです。

「正しい選択肢を選ぶ」より「選んだ選択肢を正しくする」

この言葉は、すごく心に響きました。

事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか。

経営者やリーダーには、いろんな意思決定が求められる。それまでの経験の積み重ね、データと直感など、「正しい選択肢を選ぶ」 ことができる要素はいっぱいあると思うけど、それ以上に「選んだ選択肢を正しくする」 ための胆力が大切。

リーダーの胆力は、チームの強さにそのまま反映される、とも書かれていました。この胆力が鍛えられたのは、数々の修羅場をくぐり抜けてきたからなのでしょうか。

「マッキンゼー出身」と聞くと、勝手に超賢くて、超優秀で、ロジカルシンキングができて、と偏見なのかもしれないけど、そんなイメージがあった。この本では、このマッキンゼーの環境にいたことで、「賢くみせよう」とか「資金繰りに苦労した経験がない」とか、「上から目線」とか、思考の癖がついてしまうことがある、経営者になった時にハンディキャップを背負う可能性があると書かれていました。リアルな視点でおもしろかったです。

別の章では、DeNAを卒業したメンバーの言葉として、こう書かれていました。

〝選択〟に正しいも誤りもなく、選択を正しかったものにする行動があるかどうかだけだと信じています。この考え方は、DeNAで学んだ多くのことのうちのひとつです。

人材の質には、妥協しない

創業時から一貫して、どんな人手不足のときでも、人材の質には絶対に妥協しないことをポリシーとしてきた。

この本のなかでは、色んな登場人物の、具体的なエピソードが入っていることが特長かなと思います。これも、南場さんがどれだけ人材にこだわってきたか、の表れと感じました。

多様な人材がいたほうが組織は強くなるという考え方は前にも述べたが、ロジカルシンキング軸だけでなく、多様な軸それぞれでトップレベルの人材が必要だ。どこまでも追いかけていって口説いた。そして今も口説いている。

マッキンゼーのエース3人で会社をつくったけど、4年間赤字が出てしまった経験から、ロジカルシンキング軸だけではなく、いろんな役者が必要になるということを思い知ったそうです。

人を口説くのはノウハウやテクニックではない。「策」の要素を排除し、魂であたらなければならない。きれいごとを言うようで気恥ずかしいが、私が採用にあたって心がけていることは、全力で口説く、誠実に口説く、の2点に尽きる。

事業への想いとかはもちろんのこと、良いことばっかりじゃなくて、事業の悩みや上手く言ってないこともきちんと話す。

人に「任せる」

DeNAと言えば、SHOWROOMの前田さんとか、アカツキの塩田さんとか、今注目をされている経営者がいっぱい出てきている。なぜこれほどの強いチームができたかは、この本で垣間見れた。

なぜ育つか、というと、これまた単純な話で恐縮だが、任せる、という一言に尽きる。人は、人によって育てられるのではなく、仕事で育つ。しかも成功体験でジャンプする。それも簡単な成功ではなく、失敗を重ね、のたうちまわって七転八倒したあげくの成功なら大きなジャンプとなる。

南場さんが思うすごい人たちの共通点は、皆さん個性的なので、あまり無いとのことですが、

自分が接したすごい人たちを思い浮かべると、なんとなく「素直だけど頑固」「頑固だけど素直」ということは共通しているように感じる。

他人の助言には、オープンに耳を傾ける、しかし人におもねらずに、自分の仕事に対するオーナーシップと思考の独立性を自然に持ち合わせている、ということではないか

つきなみだが、容易に成果に満足しないというのも共通している

DeNAが大切にしている「フラット」な価値観について、上下関係ではなく、球体のイメージというのはおもしろかったです。

階層の陰に隠れる人は皆無にしたいという意味で、組織を球体のイメージで捉え、全員に球の表面積を担ってもらうことにしている。球は見る角度によって無数の真正面がある。自分が対峙している相手に対してはDeNAを代表してもらいますよ、ということだ。

チームの目標を達成することを経営の中心にして、この3つのポイントを満たすことを考えてきたそうです。言うほど簡単ではなく、バランス感覚が必要。

  1. 全員が主役と感じ、ひとりひとりが仕事や成果にオーナーシップを感じるようなチームの組成、仕事の単位となっているか。
  2. チームの目標はわかりやすく、そして高揚するに足る十分に高い目標となっているか。
  3. チームに思い切った権限委譲をしているか。信じて任せているか。

この中でも、「信じて任せる」のは一番難しくて、論理ではなく勇気が必要とのこと。

ついつい長くなってしまいました。この本は、普遍で大切なことが書かれていて、何より南場さんのエピソードの数々にすっかり惹き込まれてしまいました。

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