こんにちは、Natsumiです。
今日は、昨日に引きつづきUSJのお話です。
みなさんは、USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)がV字回復をしていた、というのを知っていますでしょうか?
「東のディズニーランド、西のUSJ」と2001年に鳴り物入りでオープンし、世界中のどのテーマパークよりも速いペースで開業からの来場者数1000万人を突破したUSJ。
ピーク時は年間来場者数1100万人を達成したものの、その後は700万人台にまで落ち込んで慢性的な集客不足に苦しみ、倒産の危機に陥っています。
そのUSJが、2011年から業績を急上昇させ、奇跡のV字回復を果たしています。
こちらが、USJの入場者数を表すグラフです。
(Livedoor記事より引用)
まさに絵に描いたようなV字回復です。
USJ、入場者数ディズニー超え
しかも、2016年10月の入園者数が175万人を超え、単月としては過去最高を記録。当月の入場者数は東京ディズニーランド(TDL)を抜いたと、USJは発表しています。
いったい、どうやったらこのようなV字回復ができるのでしょうか?
このV字回復の秘訣は、ずばり「マーケティング」です。
「マーケティング」が、経営をここまで大きく変革したという例はめずらしいです。マーケターからしてみると、夢のような事例です。私自身は、ここまでの成功例は聞いたことがありません。
そして、このV字回復の立役者が、チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)である森岡毅さんです。
チーフ・マーケティング・オフィサーは、いわばマーケティングの最高責任者。
日本ではこのポジションを採用している企業は少ないです。
森岡さんは、日本においてマーケティングが重視されていない、と問題視しています。
これは日本がもともと技術力が高く、たとえばトヨタやソニーなど品質が高いメーカーが台頭し、モノや技術力で売れる時代が長く続いた。そのためマーケティングが重視されていなかったという歴史的な背景があります。自由競争が先に始まったアメリカでは、P&G、コカ・コーラ、マクドナルドなどを代表するように、マーケティングの考えが先に浸透し、マーケティング起点でグローバル企業が生まれています。ちなみに、森岡さんもP&G出身です。
この本では、なぜマーケティングが企業にとって重要か?そして、ビジネスパーソンだれもが知っておくべきマーケティングの基本がまとめられています。
マーケティングの役割とは?
「マーケティング」という言葉は非常に広いです。
ひと言でいうと、「商品を売れるようにする」仕事になります。
広告を作る、イベントなどのプロモーションをする、TVCMを作るなど、いろいろなイメージを持たれると思います。
マーケティングの本質は、「売れる仕組みを作ること」です。
この本ではマーケティングの役割について、4つ書かれています。
1. マーケティングに期待されるのは、トップライン(売上金額)を伸ばすこと。
ブランドを高めることもマーケティングの1つですが、マーケティングは最終的にビジネスに貢献していくことが求められます。トップライン(売上金額)を伸ばすことが最大の目的になります。
2. マーケティングは会社の「頭脳」でもあり、それと同時に多くの部署を動かす「心臓」の役割も担う。
マーケティングは戦略を考え、それに沿って、他の部署を動かすことが求められます。リーダーシップと、戦略的思考の両方が必要です。
3. 「どう戦うか」の前に、「どこで戦うか」を正しく見極めること
この本では3つの例が載っていますので、それぞれを詳しく見ていきます。
1) ターゲット客層
ターゲットとなる客層は、映画ファンから、全てのエンターテイメントを楽しむ客層に広がっています。「映画の専門店」から「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」へという戦略転換をした結果です。
子連れファミリーを拡大した「ユニバーサル・ワンダーランド」。
関西からではなく、全国から人が集まる。
ワンピースや、モンスターハンター、バイオハザードなどのアニメとコラボ。
そしてハリーポッターが、劇的なビジネスの成長を遂げ、日本だけではなくアジア圏からも人が集まるようになりました。
2) TVCMの質
大きくの企業でありがちなのが、TVCMに巨額の費用をかけるのが、その効果を測っていないということ。ここもUSJではテコ入れしています。
来場意向調査で、それまでの数倍もの効果を発揮するTVCMを開発。
「世界最高を、お届けしたい。」という新しいブランド・キャンペーンを実行。
こちらについては、「USJ 初代CMと現在CMを比較」という動画が分かりやすいです。「世界最高を、お届けしたい。」というキーメッセージを、どのCMでも使っていき、このイメージを植え付けることに成功しています。
3) チケット価格の値上げ
当時のチケット代、大人5,800円という価格設定は、世界標準で見ると非常に低い、約半分の価格だったとのこと。
これは最大のテーマパークである東京ディズニーランドの価格が標準になってしまい、他のテーマパークがそれ以上の価格にできなかった弊害のようです。
日本のテーマパークの品質は非常に高く、コストも高いので、上げる伸びしろがある。ここについては、緻密な計算をもとに、どのように値上げをしていけば集客数を減らさずにできるか?という決断がなされた。具体的には「価格弾力性」という、1%の値上げに対して何%売上が減少するか?という反応度を分析した。
先にブランドを価値を高めておいて、値上げを断行し、値上げの影響を小さくすることも重要。
ちなみに2018年現在のチケット代は、7,900円になっています。(当初の1.4倍)
4. マーケターは消費者理解の専門家である。
「作ったもの」を売るのではなく、「売れるもの」を作る。
これはなかなか難しいことで、大企業になればなるほど、組織のそれぞれの利害関係が働きます。各部門でゴールを持っているので、そのしがらみがあり、消費者視点にならないことがある。この事象について、ある人はカレーがいい、ある人はすき焼きがいいと言い、結果として中立的な落としどころである「カレーすき焼き」ができてしまう、という例えをされています。
(これはこれで美味しそうですが、それは一旦置いておいて)
中立的な落としどころにならないように、自分起点で周囲を説得したおして、人を動かすことが重要になる。
どうやって「売れる仕組み」をつくるか?
じゃあ、どうやって「売れる仕組み」をつくるのでしょうか?それには、3つの観点があります。
1) 消費者の頭の中を制する
自ブランドの「認知率」を高め、選ばれる必然になるような「ブランド資産」を意図的に構築する。
2) 店頭を制する
消費者が自ブランドを購入する可能性を最大化させるように「配荷率(買える場所に展開されているか)」「山積率(ディスプレイ)」「価格」などの展開に注意する。
3) 商品の使用体験を制する
消費者価値を上げる商品開発。トライアルをうまく使う。
「売上金額」=「売上個数」 x 「平均価格」=「消費者の数」x 「認知率」 x 「配荷率」x 「購入率」 x 「平均価格」
数字をモニターして、どの数字をどのように上げていくかが重要になる。
戦略フレームワーク
ポイントは、目的から目標、そして戦略、戦術に落とし込むこと。
言葉の定義をまとめます。
・「戦略」とは?
何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている資源(リソース)を、何に集中するか選ぶこと。
※資源とは6つある。
カネ、人、モノ、情報、時間、知的財産(ブランドなど)の6つ。
そもそも資源は限られているので、選択と集中が必要になる。
・「目的」と「目標」の違い
目的:達成すべき使命、最上位となる概念
↓
目標:その目的を達成するために資源を投入する具体的な的(ターゲット)
・「戦略」と「戦術」の違い
戦略:目的を達成するために、資源(リソース)を、何に集中するか選ぶこと
↓
戦術:戦略を実行するための、より具体的なプラン
ここまでまとめると、このような図で表現できます。
では、この概念について、具体的な例を見ていきましょう。
・例1)社員みんなが活き活きと働くには?
目的:社員みんなが活き活きと働く。
↓
目標:本部の社員みんなをターゲットにする。
↓
戦略:仕事の疲れを癒やして、リフレッシュさせる。
↓
戦術:全員に1年に1度、2週間の連続有給を取る。
↓
目標:USJの入場者数を増やす。(年間1,000万人以上の入場数を継続させる)
↓
戦略:エンターテイメントの「セレクトショップ」化 (映画だけからの脱却)
↓
戦術:ハリーポッターや、ワンピースとのコラボなど。
・良い戦略を確認するためのチェックリスト「4S」
Selective :(選択的か?)やることと、やらないことを明確に区別できているか?
Sufficient :(十分か?)資源が目的を達成するために十分かどうか?
Sustainable :(継続可能か?)短期的ではなく、長期的に継続できるか?
Synchronized :(自社の特徴との整合性は?)強みを活かせているか?
マーケティングフレームワーク
上記の戦略フレームワークを、マーケティングフレームワークに落とすと、こうなります。
目標 :Who(誰に売るのか?)
戦略 :What(何を売るのか?)
戦術 :How(どうやって売るのか?)
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